博士の異常な愛情 ~または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか~
ひまざぶです。
本日も、キューブリック映画を紹介します。
時計じかけのオレンジ以来ですね。
時計じかけのオレンジを遂に見た。
http://himazabu.hatenablog.com/entry/2014/03/01/220309
さて、キューブリックSF作品の中でも、コメディ要素が強い作品です。
「戦争」の虚しさを滑稽に描くことで「反戦」を謳う映画となっています。
①全編が白黒
これは、今の時代に観ると余計に臨場感があります。
戦争=昔のできごと=白黒という意味で臨場感を生んでいます。
②リッパーとマンドレイクのやり取り
リッパー (スターリング・ヘイドン) とマンドレイク (ピーター・セラーズ、一人三役) のやり取りが見事です。
リッパーの戦争狂いに入っていく様とマンドレイクのオロオロしていく様が滑稽です。
マンドレイクの髭もどこか情けなさを生む効果をもたらしています。
③コング少佐の戦闘機
殆どが室内劇、会話劇で進行していく中で戦争を直接的に表す数少ない要素が戦闘機だと思います。
メカや操縦機の雰囲気などが生々しく、ガンダムの操縦シーンが好きな人はワクワクする気がします。
④アメリカ大統領を中心とした円卓
個々の思惑が膨らみ、表面化しおかしくなっていく様子が滑稽です。
ダージットソン将軍 (ジョージCスコット) が戦争意識を高めロシアに挑発的になっていく様相が実にいい。
ストレンジラブ博士 (ピーター・セラーズ、一人三役) なんか、車椅子に乗りながら暴論を投げかける様が不気味でしょうがない。
興奮すると勝手に右手が上がるという特性もなお小気味悪く、それが小気味いい。
人口が減っても一夫多妻的にガンガン子供を作れば良い。
優秀な遺伝子を持つ人間を優先的に残すようにすればいい。
このような倫理観を無視した暴論は現代人から見てもゾッとしつつ、原発問題や原爆の影響を頭に浮かべ、またゾッとすることでしょう。
そして、頭の中にどこかでそのような暴論を肯定する声は生まれないですか?
それを必死にかき消していないですか?
あなたの中にもストレンジラブ博士はいませんか?
滑稽さと怖さの種を脳の中に植えつけられたような映画でした。